全てのレイプサバイバーの、はじめの一歩を応援します。今、この時を生きる、全ての人へ。
 

 

体験談

 

自分が変わるしかない

体験談を書いてみないかと声をかけてもらったとき、実はすごく不安でした。
ことばにするっていうこともそうですが、とにかく思い出すという事がつらい。出来れば忘れたいし、なかったことにしたいです。何もないように暮らしていたいし、手記としてまとめられるほどに自分の中で何一つまとまっていません。
でも、どうせ忘れられないし、何もなかったようには暮らせないっていうことも分かっています。

私はDVの被害者で、今は離婚して、どうにか子どもと一緒に二人で暮らしているけど、かなり辛いと思う時の方が多いです。
毎日のように夫からはセックスを強要されていていました。
仕事でどんなに疲れていても、子どもが泣いてても構わず。
最初の頃は仕方ないかなって思っていて、でもそれが続くと本当にしんどくなってきて、どうにか分かってもらおうとして、それにちゃんと話したら分かってくれるはずって思ってある時その事を話したら、「俺はストレスたまってるんだ。セックスもやらせないなんて、お前になんの価値があるんだよ」と言われました。それからはただ従うことしか出来なくなりました。殴られていたわけでもないし金銭的には余裕もあったし私自身正社員で働いていたので外に出ることが出来ていたっていうだけ、まだましだったかもと今は思ったりもします。でも、その頃は多少でも機嫌が悪いと外で男を作ってるんだろうとか言われたり、その都度暴力的なセックスを強要されて、もう精神的にはヘトヘトでした。
ある日、そのストレスをどうしたらいいか分からなくて、子どもが泣いているのを見て、いくらあやしても泣き止んでくれなくて、苛立って、子どもを叩いてしまいました。「どうしてわからないのよ!」とか言って、まだ2歳やそこらの子に手をあげてしまいました。凄まじい自己嫌悪と共に、もう一緒に死にたいって思いました。このままじゃ私この子の事殺しちゃう、そう思って、実家に逃げ込みました。

その後、離婚に漕ぎ着けるまでには、よくあるDV被害者の軌跡みたいな感じで必死に謝ってくる夫に対して、何度も何度も「やっぱりこの人は私がいなきゃだめなんだ」とか、「私が悪かったんだから」とか、そういうのを繰り返して、5〜6年がかかりました。
結局元夫は何一つ変わってはいなくて、元の鞘に納まり出したころにはまた元通りの姿に戻るだけ。
その間にも、私は子どもに対して今思うと辛く当たったりしていたし、そうする度にごめんねごめんねと子どもに謝って、もう私が加害者なんだって思いましたし、実際そうだと思います。それでも私に懐いている子どもの姿を見ると、もうどうしたらいいかわからなくなりました。
一つだけその時に気付いたことは私が変わらなきゃだめなんだっていうことでした。
このままこんな状態を続けていていいはずがない。何があったって私が変わらない限りものごとはうまくなんかいくはずがないんだって。
そうしてどうにか離婚をして、子どもとの生活をしていくなかで、やはり離婚を選んだ事を後悔したり、

そんな折りにRC-NETのブログにたどり着いてメールを出しました。
確か、虐待について書かれたブログを見て、この人にならもしかしたら何かわかってもらえるような気がしたからです。その時私は子どもとの関係に悩んでいて、とにかく私は虐待をしてしまっていてどうしたらいいかわからなくて、というようなメールを出しました。
これまで、かなり仲のいい友人達に対してもあまり離婚の原因については話していませんでした。子どもに対しての事もそうです。責められる気がしていたし、どうせ私が悪いんだから、と思っていました。
もう死にたい、そんな思いも抱えていて、相談は受けていないというのに、メールを送りつけて、相談先などの情報を貰ったりしている内に、何度かのメールのやり取りをさせてもらいました。

私が悪いんですとそればかりを言っている私に、こう返事が返ってきました。

「その自己否定館や自己嫌悪を否定するつもりもないですし、
 確かに自分の傷つきを誰かに八つ当たりしてしまうっていうことは悪いことだろうけど、
 悪いと思うなら、それを改善する為にどう動いて行くかを考えていけばいいと思います。
 悪いと思いながら悪いままで暮らすよりは、その方がよっぽど楽で、しかも子どもにとってもあなたにとっても有益な道です。
 間違うことなんて人生ではたくさんあるだろうし、それに対して対処もせずにいるくらいならば、過ちもすっかり認めて次に行きませんか。
 やった事は取り返しがつかなくても、それがあなたを否定する全てにはなりません。
 まず、あなたが生きてきたっていう姿を垣間みれただけで、私はとりあえず、あなたから勇気をもらいました。ありがとう。」

このメールには最初ちょっと傷つきました。
でも私は自分が悪いって責めながら人に否定されることを避けてきたなと思いました。子どもに対しても、この子がいなければってずっと思ってた。でも確かにそうで私は自分なんかっていう言葉を言い訳にしてそれに対してどうするかっていうことを何も行動に移してこなかった。可哀想って思って欲しかった気持ちと、誰かに分かってもらいたいっていう気持ち、それがまずあって、いつも悩んでた。そんな自分可愛さに私は自分の子どもの事も巻き込んでいたんだと思いました。

その後、子どもと一緒に紹介してもらった相談先に行き、その後自助グループに参加したりしている中で出会った人に紹介してもらって、今は母子共に、定期的にカウンセリングを受けています。
まだまだ不安定な事もありますが、今、自分とそして大切な大切な、我が子のために自分が自分を助けてあげるんだと思いながらいます。

ここまで書いてみて、こうした想いを書かせていただいて、よかったなと思います。
私の行動は間違っていました。これを読んで、不快な想いをされる方もあるだろうなと思います。申し訳ありません。
被害の体験というよりも、加害者の言葉だと思われるかもしれない、というのが、一番の不安だったのかもと思います。
私は、そのことをこれからも考えながら、子どもに対して償っていかないとと思うし、そしてまた、自分が受けていた被害についてもやっと冷静に考えられるようになってきました。

セックスを強要されてきた時間は本当に辛かったです。それが言い訳にはならないけどもやっぱり辛かったです。

あれが暴力だって気付くまでにすごい時間がかかったし、犠牲にしてきたものもあります。ただその時にそれが暴力だと伝えてくれる人がいたらなとか、もうちょっと人に相談できていたらとかいろいろ思うことはあります。
虐待などのいろんなニュースを見る度に、この人も辛かったのかな、相談できる人がいなかったのかなと思うこともあります。

最初は、ここに、自分の被害だけを書こうと思っていました。
でも、それじゃあ私また自分に嘘をつくことになるなと思って、今私が思っている事を全て書きました。

同じような環境で今も苦しんでいる方がいらっしゃると思います。
そんな方に対して、私が今出来る事はこうしてここに体験談を書かせていただくことでした。
一つの行動で全ての事がどうにかなるという事もないかと思いますが、やはり自分で変えていくしかないんだって思います。
私もこれから、少しずつですが歩みをすすめていこうと思っています。
RC-NETブログからのご縁で、こうして私の体験を書かせてもらえたことに感謝しています。ありがとうございました。




(※RC-NETでは、基本的に相談などは受け付けておりませんので、その旨ご了承下さい。)

  2011年2月13日(日)掲載

 

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