全てのレイプサバイバーの、はじめの一歩を応援します。今、この時を生きる、全ての人へ。
 

 

体験談

 

被害者のこれからと、周囲の人間、社会に出来る事。

友人からの突然の電話でのあまりに落ち着きの無い様子に、何かがあったんだというコトはすぐにわかった。
とにかく今いる場所を確認してその場所に向かうと、友人がマクドの横で立ちすくんでいた。
とにかく安全な場所にと思って、近くに住んでいた友人の家に行き、二人で話を聞いた。
家にあがってコーヒーだかなんだか、暖かいものを出してもらって、でも彼女はただ涙を堪えるようにうつむいたままで、
何も語ろうとはしなかった。
何時間たったかわからないけど、とにかく私たちはその場にいることしか出来なくて、
話したくなったら話して、と言いながら、ずっと沈黙の中にいた。
明け方彼女が話してくれたのは、バイト先の人との飲み会の帰りに上司に無理矢理ラブホテルに連れ込まれて、レイプされたということだった。
かなり強引に連れて行かれて、避妊もなしに、乱暴な性行為を強要された。
酔っていた彼女は、抵抗する事もできなかった。
酔ってなくても、出来なかっただろう。
とにかく強引で、そして、「いつも誘っていたくせに」などという言葉を、彼女に投げつけた。

「怖かった」
と言って、彼女はただただ泣いていた。
警察に行こうと一人が言うと、彼女は「でも、私が悪いから」と言う。
私が悪いから、悪いから、と、虚ろな表情で、ずっと言っていた。
解離してる、と思った。
私自身は、性暴力被害者の支援団体に関わりだして数年が経っていた。
私自身も、その経験があった。
その中で、でも自分の周囲でこうした事件が起きたのは始めてのことで、
私自身、自分の経験と照らし合わせて、かなりしんどくなってきた。
どうしよう、と思いながらも、
でもどうにか冷静を保って、とにかく今起きてることは、あんたが悪いんじゃないから、詳細はわかんないけど、とにかく悪くないから、と言い続けるしか出来なかった。
こんな時に、私に連絡をしてきれくれたんだから、と思うと、変な話、嬉しい気もした。
よかった、この子には言える人がいて。本当によかった、と思った。

その後は、彼女の様子を見ながらひたすら話に相づちを打ちながら、
いけそうな所で、怪我はないか、家族に連絡をとってもいいか、ということも聞きながら、
朝が来て昼が来て・・・
私自身もしんどかった中、家を提供してくれてた友人が朝からずっとゴハンを作ってくれたりお茶いれてくれたりと、
すごい冷静でいてくれたことが、本当に救いだった。
昼頃に、彼女の家族が来てくれて、
その時に彼女のお父さんが言ってくれたことが、今でもとても印象に残っている。
彼は、まず私たちにすごく丁寧にお礼を言ったあとに、

「俺こんな辛いこと始めてやけど、
絶対お前にこれ以上辛い想いさせないように、頑張るから。とりあえず、今日は家に帰ってゆっくり寝よう」

彼女はなかなかなお父さんっ子で、その話は聞いていて、でも私は、自分のこれまでの経験から、こんなシーンに父親なんかが来たら絶対アワアワしちゃって怒り出しちゃって、とかいうことになると思っていた。
でも、彼はすごく冷静だったし(内心は、冷静じゃなかっただろうけど)、少なくとも彼女にそうした動揺を見せまいと努力していた。
おっさん、かっこいいな、と思った。

後で聞いた話では、その時の彼の感情は、ただただ「犯人殺してやる」だったらしい。
でも、そんなこと彼女に聞かせたって辛いだけやから、と、
とにかく発狂しそうな気持ちを、抑えてたと言っていた。

その後も、警察や、他の支援機関への繋ぎなどについて私にいろいろ相談を持ちかけてきたりもしてくれて、
彼女の家族と、そして私たち友人たちで、彼女のサポートをした。
でも何より、彼女にとって、一番辛い時に連絡が出来る人がいたことと、帰る場所に安心出来る場所があったっていうことが、
何よりの救いになったんじゃないかと思う。

彼女自身、事件後に大分荒れたり自虐的になったりと、レイプ後の症状を出したりもしたけど、周囲の人間がとにかくそれを見守ること、本人を責めるんじゃなくて受け止めることを心がけながら接して行くなかで、
病院やカウンセリングなどとも並列しながら、少しずつ落ち着いていった。
もう死にたいって言って泣き叫んで暴れたりもしてた。
関係ない話でワイワイなってるときに、いきなり黙り込んで泣き出してたり。フラッシュバックがとめられないのだ。

バイトは次の日に父親から電話を入れて「やめさせる」と、
加害者本人に言ったらしい。加害者は、大分慌てた様子だったようだ。

大分落ち着いて来たあとに、警察にも届けたが、証拠不十分で、起訴には至らなかった。
とにかく悔しい。

加害者は今ものうのうと社会の中で、それなりの役職についているのだろう。
そして彼女は今も、大分落ち着いて来たとはいえ、病院への通院や投薬も必要とする時もあるし、
社会復帰への道は、まだ遠い。
不意なフラッシュバックや、自殺願望などが沸き上がってくることもあるという。
でも、
こうして助けてくれる人がいるってだけ幸せだよね、とか言う。

そうかもしれないけど。
でも、加害者がいなければ、こんなことにはならなかった。
被害にあったとき、周りの人に出来る事はすごくたくさんあるけど、でも、
被害をなかったことにすることは出来ない。

被害者だけが、こんな重荷を背負い続けて行く。これからもずっと。
なんだこの不平等さ、と思う。

その不平等さを、少しでも和らげる為には何が必要なんだろう。
加害者がいなくなる、性暴力がなくなる、というのは手っ取り早いけど、
そんな夢見がちな話を今している場合じゃないと思う。

今、ここにいる被害者を助けて欲しい。
苦しんでいる被害者に、少しでも役立つ情報を、整備を、そして周囲の人間達を、
もっともっと創出していかなければならない。

それを伝えたくて、被害にあった彼女やご家族に協力いただいて、
これを書かせていただきました。

少しでも被害者にとって生きやすい世の中になりますように。

被害者が責められず、発した言葉をちゃんと受け止めてもらえる、そんな場所が少しでも増えていきますように。

そう願っています。

  2011年2月13日(日)掲載

 

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